#もっといい就活

1500億円のM&Aに失敗!?企業も挫折をさらけ出す「失敗説明会」

2020年2月20日

「学生も、企業も、仮面を脱ぎ捨てよう。」もっとお互いの本音をぶつけ合い、本質的な部分で学生と企業のマッチングを図りたい。そんな意図のもと、日本最大級のキャリア教育支援NPO en-courage(エンカレッジ)が立ち上げた「#脱就活」プロジェクト。

その第1弾となる、「電通若者研究部(電通ワカモン)」とのコラボ企画「失敗説明会」が、1月12日に開催されました。型通りになりがちな「ガクチカ(=学生時代に力を入れたこと)」ではなく、「ガクシツ(=学生時代に失敗したこと)」を語りあう実験的なイベントです。

学生40人が参加した第1回「失敗説明会」。従来の「合説」からはかけ離れたノースーツの和やかか雰囲気でスタート。

「失敗説明会」では、学生だけでなく、企業も「失敗」を語ります。どんなビジョンを描いて、どんなプロジェクトに挑戦して、どんなことを学んだのか。「意志の宿る失敗」を学生の前で披露することで、企業のスタンスを深く理解してもらいたい。電通ワカモンの用丸さんから趣旨の説明があった後、まずは参加企業7社の「失敗プレゼン」から始まりました。
失敗説明会」にご参加くださったのは、職種も規模もさまざまな7企業。「失敗説明会」らしく、企業名ではなく「『弊社は○○で失敗しました』○○さんにご説明をお願いします」というユニークな紹介の仕方で失敗プレゼンは進んでいきました。

総合商社「大型M&Aで失敗しました」

「弊社は大型M&Aで失敗しました」と紹介されたのは、入社11年目の総合商社・Wさん。なんと1500億円のプロジェクトでの失敗談が飛び出しました。
「私は入社後、10年間、不動産を担当し、現在は採用を担当しています。今回お話するのは入社8年目での大きな失敗についてです。当時、東南アジアに赴任していたのですが、現地のパートナーから『もっとWさんと一緒に仕事がしたい』とM&Aのお話をいただきました。1500億円という金額のオファーだったので、当然難易度も高く、非常に大きな案件でした。
説明会の趣旨通り、M&Aは失敗に終わりました。それだけの出資をするのに値する企業なのか、相手企業の分析に慎重になりすぎた部分は否めませんが、もっと違った価値の提供ができなかったのか、もっと違ったバリュエーションを創造できれば、私にもウチの企業にも違う未来を描けたのではないかと、今でも残念な気持ちでいっぱいです。ただ、私は失敗を失敗で終わらせないというのがポリシー。いずれまた不動産部門に戻ったときに必ずリベンジしたいと思っています」
 
「失敗は、挑戦した人にしか得ることができない貴重な経験」と話すWさんですが、何よりも「素晴らしいパートナーが一緒にやりたいといってくれたのだからやってみろ」と背中を押してくれた会社に感謝しているといいます。 

大手広告代理店「宇宙ベンチャー事業支援で失敗」

また、こんな面白い「失敗談」もありました。クライアントは成功に導いたけど、自分の企業は失敗に終わった、某大手広告代理店・Hさんの「弊社は宇宙ベンチャー事業支援で失敗しました」です。
「2010年から月面探索に参加しているベンチャー企業のお手伝いをしたときの話です。私たちが関わるようになったのは2015年くらいでしたが、まだ4名程度の小さな会社で、そもそもどうやって運営資金を集めるのかを想像することから始まりました。そこで思いついたのが、月面探索の日本代表としてそのベンチャー企業を応援するシステムを作り、協賛金を集める方法です。

結果、7社から約10億円の協賛金が集まり、起業は軌道にのりました。当社も応援したいという思いからCMを作って大々的に宣伝したことで、2年後には101億円というものすごい額の資金を調達できるまでに成長しました。お手伝いを始めたときから数百倍のバリューアップです。
ところが、きちんとした金銭契約を結んでいなかったため、クライアントは大成功したのに、弊社にとっては損失を出す結果になってしまいました。どんなに小さな会社であっても、先を見越した契約を結ぼうという教訓になりました」
 
その後も宇宙事業への支援活動の担当を続けているHさん。「宇宙事業への支援は、ここ2、3年でようやく稼げるようになってきました。好きにやらせてくれている会社に、これから恩返しをしていこうかなと思っています」とお話していました。
「電通若者研究部(電通ワカモン)」とのコラボ企画「失敗説明会」が、1月12日に開催された。参加企業7社の「失敗プレゼン」では、「1500億円のM&Aに失敗」など普段学生の目に触れることのない”失敗”が披露され…

「失敗を許してくれる土壌」が必要

私たちは就活で学生が「ガクチカ」に力を注いでいる背景には、今の社会に「失敗を許さない」文化や風潮があるからだと考えています。しかし、みなさんの失敗談からもわかるように、挑戦があるからこそ失敗も生まれます。

学生たちも目を輝かせて話に聞き入っていましたが、彼らが失敗を恐れず、いろいろなことに挑戦するためには、何よりも企業側の「失敗を許しくれる土壌」が必要であることがよくわかりました。

ITベンチャー「収益5倍に未達で失敗」

さて、ベンチャー企業に興味のある学生は多いと思いますが、ベンチャー企業の代表取締役社長・Oさんからは、こんな失敗談をご披露いただきました。
 
「『弊社は前年度比、収益5倍に未達で失敗しました』。皆さんは『voicy』を知っていますか? 私たちが試行錯誤の末に作り出したサービスです。その結果、2018年には社員数4名で年間収益がなんと30倍に伸びました。そこからどんどん社員を採用することになるのですが、それが失敗の始まりでした。
2019年は5倍の成長率を目指していたのですが、蓋を開けてみたら2〜3倍。普通の会社ならそれでも上出来だと思いますが、前年に30倍を叩き出していたため、投資家からも「おかしいのでは?」という声があがり、本当に大変な思いを現在進行中で経験しています。

現在進行中ということで、『失敗』したかどうかの答えはまだ先なのかもしれませんが、5倍の成長だけに目がいってしまったばかりに、会社としての体裁を置きっぱなしにしてしまったところに問題があったと気づいたのは最近のことです。

とにかく人を増やせと、社員を増や続けた結果、わがままなパーソナリティーだけがどんどん増えて、事業は進まず、経営が大変になる。つまり、会社と社員のアンマッチという不幸な結果につながってしまったんですね。
そして、昨年の暮れ、『このままではいけない。スタッフ全員が一丸となる必要がある』と考え、『これからは本気で会社のことを考えてくれる人たちと働きたい。自分のキャリアアップのためだけに働きたい人や、できるだけ楽がしたいと思っている人はやめてください』と宣言したところ、社員は1/3に減りました。

そうしたらどうなったと思いますか? めちゃくちゃ会社の雰囲気がよくなったんです。目標の立て方や組織の作り方をおろそかにしてはいけない、そして会社と社員のマッチングの大切さを身をもって実感しました。会社のことを真面目に考えてくれる人たちと、ちゃんと走れる会社を作ろうという考えにたどり着くまでの1年間は、本当に失敗だらけでしたが、総じておもしろい失敗経験だったと思います」
時間の関係で、この場では具体的な失敗談をお聞きすることはできませんでしたが、最後の「失敗マッチングタイム」で、Oさんは学生たちからたくさんの質問を受けていました。失敗談を話したからこそ、企業も学生も取り繕うことなく、本音で話し合える場になったのではないでしょうか。

「失敗説明会」後半では学生40人がピッチ

前半では参加企業7社の失敗談が披露された「失敗説明会」。後半では、40人の学生が一人90秒で「ガクシツ」を披露するピッチが行われました。

失敗の規模に関わらず、そこには「世の中をこう変えたい」「自分が感じている理不尽をなくしたい」という確かな「意志」が宿っていました。
(構成:塚本佳子)

前編(企業):「1500億円のM&Aに失敗!?企業も挫折をさらけ出す「失敗説明会」」へ
後編(学生):「失敗でマッチング 40人の優秀層学生が「ガクシツ」90秒ピッチに挑戦」へ

Profile

en-courage

エンカレッジ

日本最大級のキャリア教育支援NPO。2014年に京都大学で生まれ、2020年時点で全国72の大学に支部を持ち、5万人の学生会員を抱える。就活を終えた学生(メンター)とこれから就活を始める学生(エンター)の、1on1面談を通じて「本質的なキャリア選択」の実現を目指す。

https://en-courage.com/

Dentsu Wakamon

電通ワカモン

高校生・大学生を中心に10〜20代の若者の実態にとことん迫り、若者と社会がよりよい関係性を築けるようなヒントを探るプランニング&クリエーティブユニット。若者と社会の間に立ち、双方とフラットに向き合いながら企業のビジネス創造や日本社会の活性化を目指す。

https://dentsu-wakamon.com/