#もっといい就活

なぜ「失敗している企業」の方が、学生には魅力的に見えるのか?

2020年2月20日

#脱就活」ムーブメントの第1弾として、エンカレッジが、電通若者研究部〈wakamon(ワカモン)〉と共同で取り組む「失敗人財プロジェクト」。キックオフとして1月12日に開催された「失敗説明会」では、失敗をテーマに、従来型の”合説”の概念をひっくり返すさまざまな挑戦がなされた。

実は、学生にとっても「成功しか語らない企業」より「失敗を語れる企業」の方が、何倍も魅力的に映るという。その理由を、京都大学4年生でエンカレッジ代表の相馬弘明と、東京大学法学部卒業後「クリエイティビティやコミュニケーションの力で、世の中に前向きな空気感をつくりたい」と電通に入社、電通若者研究部(電通ワカモン)としても活動する用丸雅也さんが語る。

学生も企業も、ポジショントークをしない合説

用丸:今回開催した「失敗説明会」は、企業が一方的に学生に語りかける従来の説明会とは異なり、「学生も企業もどちらも主役」であり、「互いに失敗を話し合う」ことがコンセプト。当日ご参加いただく企業は7社で、現場社員から採用人事担当者まで職種はさまざまです。企業側には「弊社(私)は○○で失敗しました」という失敗エピソードと、その裏側の意志を話していただきます。
 
相馬:学生にも失敗プレゼンテーションとして、90秒という短い時間の中で、「私は○○で失敗しました。世の中をこう捉えて、でもこう変えたくて、挑戦したんです」という失敗談を話してもらいます。
 
用丸:企業が一方的にポジショントークをして終わりという説明会が多い中、結構チャレンジングな企画ではないかと思っています。
 
相馬:企業側の反応はいかがでしたか?
 
用丸:最初からとても好感触でした。人事の方の意見で印象に残っているのが、「どの学生も同じような成功体験しか言わないので、面接の限られた時間の中でその学生を理解するのはとても難しい。極めて少ない情報で合否を決めなくてはいけないことに心苦しさを感じていた」という言葉でした。
 
相馬:なるほど。僕がちょっと心配だったのは、企業側が学生の失敗を聞きたいのはわかるけど、果たして企業が自分たちの失敗を学生に話してくれるのだろうかということでした。
 
用丸:今回、ご参加いただく企業の方々に事前にヒアリングをして感じたのは、どんなに若い社員であっても「課題設定をする→意思決定をする→行動を起こす」という健全なサイクルを経たうえで失敗しているということです。だから失敗をポジティブに捉えることができるんでしょうね。

失敗を聞くほど、企業の魅力は増す

用丸:失敗談のヒアリングを通して、話を聞いている僕も惹かれるものがありました。「この会社、実はこんな挑戦をしているんだ」「あの成功の裏にはこんな失敗があったんだ」という、これまで表に出なかった話ばかり。こういった話ができる環境を、世の中全体に広げていけたら、日本も挑戦しやすい社会になるのではないでしょうか。
 
相馬:失敗を聞けば聞くほど、企業の魅力が増す感じですね。

用丸:世の中に対する企業のスタンスが失敗からは垣間見えますからね。
 
相馬:学生の立場からしても、チャレンジできる環境があると知れるのは大きいですよね。失敗そのものというよりも、それを通じてどういう取り組みをしているのかがわかる。より深く企業を理解できるきっかけになると思います。
 
最近、「うちの会社では新入社員にも新規事業を任せます」という姿勢を売りにしている企業は多いのですが、学生にとって魅力的に映るワーディングである反面、失敗したらどうなるのだろうという不安もあります。実例として、事前に失敗体験が聞けることで、チャレンジしやすくなるのではないでしょうか。
 
用丸:たしかにイノベーションを売りにしている企業は増えていますよね。イノベーションは「若者」と「よそ者」と「馬鹿者」から始まると思っているので、若い人にアイデアを出させるのはいいことだと思います。ただ、新規事業を創ること自体が目的になっているケースが多いことに違和感を覚えます。結局、アイデアを出させるだけで形にならないことが多すぎる。
優秀な学生が、ファーストキャリアを選択するに当たって本当に知りたいこととは何なのか?その問いを解く鍵は意外にも「企業の失敗」にこそあるのではないか…

「新規事業」を自己目的化したくない

用丸:昨年、電通のインターンシップのプロデュースをしたのですが、気をつけたのが、まさにその部分でした。つまり、「アイデアをアイデアで終わらせないインターンシップ」を設計したんです。インターンシップの本来の目的は就業体験。実際の仕事では、「0→0.5」のアイデアだけでなく、「0.5→1」の「アイデアを実現するためのアイデア」も重要だからこそ、クラウドファンディングのCAMPFIREさんにもご協力いただき、アイデア実現型インターンシップを開催しました。面接ではスキルを問うのではなく、どれだけ熱い思いを持っているかという部分だけを見て採用しました。
 
相馬:具体的にはどういうことをしたのですか?
 
用丸:「参加者はインターン生ではなく、プロジェクトリーダーである」ということを前提に「あなたが"ほうっておけないこと"を解決してください」という課題を出しました。「日本の性教育に憤りを感じている」「チケットの不正販売が許せない」といった想いを持つ学生が集まり、ひとりひとりが自分のテーマを持って、課題解決に向け取り組みました。
 
結果、成功したプロジェクトも失敗したプロジェクトもありますが、皆が自分の熱い想いを形にするために挑戦しました。なかにはNHKのニュースやYahoo!ニュースのトップに掲載されたプロジェクトも。単に「新規事業を考えてください」というのではなく、学生の意志を引き出して挑戦してもらうことで、成功/失敗に関わらず、今後のキャリア形成において重要な原体験を形成できたのではないかなと考えています。
 
相馬:学生にとってもとても貴重な経験になったと思います。先ほど「失敗体験を語る場がほしかった」という企業の方のお話も出たけど、みんな本音で語り合える場をほしがっているのだと思います。でも社会がそうさせてくれない。だから、どこか(誰か)が熱い思いを発信して動かしていかないといけない。僕は「失敗説明会」がそのきっかけとなるのではないかと思っています。

これからは「エディケーショナル・リクルーティング」の時代

用丸:本来キャリアデザインは線の話。卒業前年の3月に一斉に就活に取り組むのではなく、それまでやってきたことが結果的に職になるという就職活動が健全だと僕は思っています。現在の就活は企業に入る「就社」活動になっていますが、今後は本当の意味での「就職」活動になっていくのではないでしょうか。正解/不正解よりも、好き/好きじゃないの感覚を育むことで、自ら伸ばしたいスキル・職能を身につけ、本当の意味での「就職」に向かっていけるといいんじゃないかと思います。
 
例えば、サークル活動がそのまま就職につながってもいい。新卒のタイミングですでに3社での正社員経験があってもいい。そんな新しいキャリアデザインをエンカレッジと一緒に実現できたらいいですね。
 
相馬:学生側が意識を変えると同時に、企業側もキャリアを考えることの重要性を説くことが大事ですよね。用丸さんがおっしゃったように「うちはこんなにいい会社ですよ」という「就社」としてのアピールではなく、学生がキャリアを考えるためのきっかけとなるような、そんな教育を考えてほしいです。
 
もちろん、企業側に「採用活動」があるのはわかっているけど、学生がよりよく働けるように、より日本が強くなるように、自分たちの会社のアピールに終始しないよう、企業も新卒リクルーティングをして欲しい。そういう新しい採用活動の形を、僕らは「エディケーショナル・リクルーティング」と呼んでいるのですが、企業が採用活動をしながらキャリア教育を提供していけるような世の中になっていったらと思います。 
(構成:塚本佳子)

第1回:「エンカレッジと電通ワカモンが「就活」をリデザインする理由」へ
第2回:「「ガクチカ」から「ガクシツ」へ 企業と学生が“失敗”を通してマッチング」へ
第3回(最終回):「なぜ「失敗している企業」の方が、学生には魅力的に見えるのか?」へ

Profile

Soma Hiroaki

相馬弘明

京都大学4年生(2020年2月時点)。2020年度のエンカレッジ代表。

Masaya Yomaru

用丸雅也

東京大学法学部卒業後、「クリエイティビティやコミュニケーションの力で、世の中に前向きな空気感をつくりたい」と電通に入社。第2クリエーティブプランニング局所属。電通若者研究部(電通ワカモン)としても活動中。