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3万4000人規模の学生NPO団体エンカレッジ その組織運営の秘密とは?

2020年3月5日

全国72の支部で、1300人のメンターによって年間3万回行われるエンカレッジの面談。会員数3万4000人(21卒学生)、日本最大級のキャリア教育支援NPOであるエンカレッジは、すべての運営を学生が担っている。これから就活を始める学生(エンター)に、就活を終えた学生(メンター)が1on1でファーストキャリアの選択に寄り添い、「自走できる人材」を社会に輩出するエンカレッジは、どのように組織運営されているのか? その最大の強みは何なのか?

東京大学、早稲田大学、明治大学でそれぞれ支部長として、多くの学生から支持されるメンター3名に聞いた。

全国72支部、3万4000人の組織運営を通じた自己成長

ーーエンカレッジは、就活を終えた学生が3年生の2月から4年生の2月まで、1年間メンターとして組織運営にコミットし、次の学年の新メンターにバトンを渡していく仕組みが特徴的ですが、皆さんはなぜエンカレッジのメンターになろうと思われたのですか?

自己紹介をかねて、まずはそのきっかけを教えてください。



坂上大輔さん(以下、坂上):僕は現在明治大学商学部の4年生です。エンカレッジのメンターになったのは、ゼミの先輩がエンカレッジに所属していて紹介してもらったところからです。理由は2つありました。一つは、「事業をつくれる人間になりたかった」という思いから。もう一つは、「他人が変わる瞬間」を見るのがすごく好きだから、です。

メンターとして1on1で学生のキャリア選択に立ち会うと、どこかでその人が本気になる瞬間を目撃することになります。これまで頑張りたくても頑張れなかった学生が、就活を通してスイッチが入り「変われる瞬間」が訪れます。そのことを聞いていたので、メンターになることには魅力を感じていました。
鈴木陸さん(以下、鈴木):僕は早稲田大学政治経済学部の4年生です。友達がエンカレッジのメンターをしていたので、存在自体はわりと早くから知っていました。メンターになろうと決めた直接的な理由としては「何かをやりきる経験」を学生時代に積んでおきたかったから。バスケ部に所属してそれなりに楽しい学生生活を送っていたのですが、本当に熱中して「やりきった!!!」と思える経験はまだしていないな、と就活を通じて気づき、「何かやりたい」という気持ちが膨らんでいきました。

そんな時に、エンカレッジのメンターにならないかと声をかけてもらいジョインしました。3万人を超える組織運営に直接関わりながら、面談を通じて一人の人間の成長に寄り添うことで、自分自身もとても成長できるのではないかと感じました。

もう一つの大きな理由としては、就活を通じて自身のキャリアや人生を深く考える機会を、もっとたくさんの学生に持って欲しい、という思いもありました。僕はたまたまエンカレッジのメンターに就活中伴走してもらっていたので、その機会がありましたが、学生全般を見ていると、就活を「志望企業に受かる/受からない」という軸だけで捉えていてつらそうで。そういう現状を変えたかったんです。
張昱さん(以下、張):東京大学経済学部4年生です。エンカレッジは、もともと就活中にとてもお世話になっていて。素敵なメンターについてもらって「いい団体だな」と実感していたので、次に自分が「メンターになりませんか?」と誘われた時は、「なろう」と自然に思いました。私は就活でマーケティングを志望していたのですが、特殊な分野で情報が少なく苦労したので、後輩にはそういう思いをさせたくないという気持ちから活動していました。
 
また、「学部4年生から何か新しいことを始める」という経験が持てることも魅力でした。普通、4年生になってから新しいコミュニティに属せることって、なかなかないですよね。しかもエンカレッジのメンターは会う人会う人、人間的にも魅力があり「この人たちと一緒に活動できるなら」と決断しました。

回数無制限、いつでも必要な時に無料の面談を提供

ーー3万4000人のエンターに対して、1300人のメンターが1on1でファーストキャリアの選択をサポートするエンカレッジの体制ですが、みなさんはだいたい何人くらいのエンターを担当されているのですか?



鈴木:これは結構個人差があるのですが、僕の場合は1年間で35人くらい担当してきました。自分が担当するエンター以外にも、他のメンターのエンターと特別面談をやったり、LINEでのやりとりもしたりもしているので、全部だと40人くらいの学生と接したことになるでしょうか。

エンカレッジでは、就活の最初から最後まで一人のメンターが伴奏しきる形を原則としていますが、エンターの視野を広げて新しい刺激を受けてもらうために「特別面談」を設定するなど工夫しています。

坂上:僕は、50人くらい担当していますね、特別面談も入れるとプラス20人くらいでしょうか。

:私は担当エンターが10人くらい、特別面談を入れると、のべ50人程度です。



ーーだいたい一人のエンターにどのくらい面談をするのですか?



:一人の面談にはだいたい1時間半かけるので、1年間でかなりの時間を面談に割いていますね。特にサマーインターンの前後は面談希望が多くて、1日中大学で面談している日もあるくらいです(笑)。でもすごく楽しい。

鈴木:回数でいえば、1人のエンターに確実に2回は面談をしますね。あとは適宜です。

坂上:多い人であれば、7〜8回面談することもありますが、基本的に面談の目的は「自走できる段階まで学生に寄り添うこと」にあるので、学生自身が追求したい目的をしっかりと認識して、行動に移せるようになればOK。個人差はあるものの、早い人であれば2回程度の面談でその状態に達します。でも、本当にケースバイケースで、学生一人ひとりのペースに合わせて面談を続けます。もちろん、回数に制限を設けていないので、受けたい時に好きなだけ面談を受けられるのがエンカレッジの特徴です。

1300人のメンターが「面談のコツ」を磨き続ける理由

ーー他の就活支援団体も面談は実施していますが、結局のところ「エンカレッジの面談」の最大の特徴とは何なのですか?



鈴木:やはり最大の特徴は、すべて学生がやっている点ですね。過去に企業の方から「学生がやる面談に本当に意味があるのか?」と聞かれたことがあるのですが、むしろ学生であることにこそ意味があると思っています。というのも、企業側のキャリアアドバイザーによる面談では、上下関係が生まれてしまいがちだからです。どうしても面談をする側が、社会人として先輩になってしまいますし、場合によっては「採用する側」でもあったりする。そうなるとどうしてもフラットに話しづらいですよね。でも、学生同士であれば壁がなく、フラットな関係で伴奏者であり続けることができます


坂上:あとは、組織開発のプロフェッショナルと連携してコーチング研修をやるなどをやるなど、メンター側の育成にも力を入れています。また同期のメンター同士の交流も活発なので、豊富に蓄積されたナレッジが全国の支部で共有されているのも強みですね。

鈴木:エンカレッジには、メンター同士のナレッジ共有に取り組む専門部署があります。その部署が月一で書いて回してくれる支部報を読むことで、面談や支部運営のコツがわかるようになっています。

さらにメンターの面談に対するエンターからの評価が公開されているので、それを見て評価の高いメンターに直接相談することもあります。エンターからの満足度が高いメンターは、「面談の後にNA(ネクストアクション)を出すようにしている」「絶対に一回の面談で新しい気づきをつくり、文章にして共有する」などの工夫をしていることがわかりました。

坂上:そうですね、僕も「面談がうまいメンター」はよくチェックするようにしています。と同時に、自分への評価も意識していますね。どこを改善すればもっといい面談ができるようになるか、常に工夫しています。

鈴木:「他の学生に勧めたいか」「就活に対する意欲がアップしたか」など、エンターからの満足度は10段階で評価していて、それを見ながら全メンターが面談の質を上げていく努力が自然とできる仕組みがあります。

:他にも「最後まで一人のメンターがエンターの面倒をみる点」も大きな特徴です。

その学生のためになると判断すれば、途中で担当メンターを替えることもありますが、やはり一人で担当するのが基本スタイル。面談の回数は無制限とはいえ、就活の時期は限られていますし、1回の面談は1時間半程度なので、その接点の中で目の前のエンターのためにどこまで価値提供できるかを常に真剣に考えています。面談以外にも、「ES添削をして欲しい」と頼まれたら毎回ちゃんとやりきるなど、そういう小さな伴走が大事だな、と。
究極的には「全部自分たちでやらきゃいけないから」だと思います。エンカレッジのメンターをしていて、誰かから何かをやれと指示されたことは一度もありません。

専門セクションをつくり、高度な組織運営を実現

ーー1on1面談以外にも、エンカレッジは全国72の支部、3万4000人規模の組織を学生自身が運営している点がユニークです。エンカレッジの組織運営について詳しく教えてください。



鈴木:そうですね、メンターの活動の中では、面談は一部にすぎなくて、組織運営に割いている時間はかなりあります。

坂上:エンカレッジは、先ほど出てきた「ナレッジ共有」の他にも専門のセクションに分かれていて、セクションごとに細かく運営されています。たとえば、面談の数を伸ばしながらその質を上げていく、イベント設計をおこなう、メンター自身の活動の充実度を考える、大学ごとの運営を担うなど、各部署に分かれています。

鈴木:僕自身は、リーダーとして、学生と企業の接点をつくるセクションにいました。自分では就活エージェントを利用した経験がないのですが、エンカレッジを通じて繋がれる企業の幅は、一般的な就活エージェントよりも広いと思います。ベンチャーから日系大手、外資まで幅広い企業とネットワークを築き、専門セクションがさらにそのバリエーションを増やそうと日々努力しています。全国47都道府県どこにいても「等しく選択肢を持てる」。それが目標ですね。

坂上:僕の場合は、大学支部のチーム長を統括する役目をしています。たくさんのチームがある中で、うまく機能しているチームと課題を抱えているチームが存在する。その差を分析して他のチームにも応用していきます。


:私はメディア担当ですが、東大支部ではLINEグループに21卒のエンター1000人を招待し、そこに選考情報やイベント情報を流す仕組みを今期整備しました。そこで就活中の東大生に役立ちそうな情報を日々投稿しています。昨年LINEグループが450人だったところを、今年はメンバー全員で「メディアセクションを強化しよう」と決め、後輩たちに声をかけ続けることで倍以上に増やしました。

企業でインターンするよりも「組織運営」が学べる

ーー後輩のためとはいえ、エンカレッジのメンターとしての活動には、エネルギーも時間も相当必要ですね。なぜ、ここまでコミットできるのですか?



坂上:そうですね、究極的には「全部自分たちでやらきゃいけないから」だと思います。エンカレッジのメンターをしていて、誰かから何かをやれと指示されたことは一度もありません。何をすればもっとエンターに価値提供ができるか。どうすればたくさんの企業と学生のよりよい出会いを生み出すことができるか。どうすれば全国72もある支部のそれぞれをうまく運営できるか。それらをみんなでとことん考えて、実行していく。ただそれだけです。

とにかく自分たちで考えて、自分たち経営しているという感覚を持てることが楽しい。事業を設計して運営していく経験が積める点が魅力です。

坂上:実は今、企業2社で長期インターンをやりながらエンカレッジの運営に関わっていますが、インターンでは味わえない経験ができていると実感します。企業では、どうしても「立場」が明確になってしまいます。具体的には、仮に新規事業部でインターンをしていても、全体を俯瞰して意思決定をするのはどうしても社員の方で、「上流部分」に学生がコミットできることはないでしょう。そこを味わえるのはエンカレッジ特有ですね。すごく充実感があります。

鈴木:実際に意思決定から組織運営までを経験することで、自分自身が成長できる環境が揃っています。

ここまでエンカレッジにフルコミットできる理由としては、仲間の存在も大きいです。エンカレッジのメンターは、①やりきる力、②フラットさ、③ビジョンへの共感、④就活習熟度という4つの軸を中心に、一定の採用基準をクリアしているので、みんな優秀で人格的にも素晴らしいと感じます。これだけ他者(エンター)のためを考えられる仲間が揃ってる組織は稀有ではないでしょうか。たとえば、早稲田支部の場合そうしたメンターが70人もいるので、その規模で1年間夢中になって物事を成し遂げられるのは嬉しいですね。

坂上:そして、1年の活動の結果として、小さくはないインパクトを残せる点も、充実感に繋がっています。僕が所属する明治大学の場合、毎年7000〜8000人が就活をしますが、その学生たちの中で一人でも多くの人を、自身のキャリアについて真剣に考えられる人材に育て上げ、社会に輩出していくことの意義は大きいと思います。

「1年間全員全力」だからこそ、出せる結果がある

ーーみなさんは現時点で4年生の2月。エンカレッジのメンターとして1年間の活動を終えようとしていますが、今何を感じていますか?



坂上:友達じゃなくて「仲間」が増えたことが一番よかったですね。何かを目指して一緒に頑張ったという経験ができたことが何物にも代え難いです。サークルや部活など、他の活動ではなかなか得られない時間でした。

鈴木:仲間の存在については、まさにそうですね。あとは「行動することが大事」という点を身をもって理解しましたね。結局いくら分析して目標を立てても、行動しないと何の意味もない。理想を追い求めることがすごく大事で、理想のために、言い訳をせずに着実に行動し続けることを覚えました。この経験は社会人になってからも役に立つと信じてます。

:二人が答えたことは私も同感です。それ以外では、自分が見ている世界が広がりましたね。メンターにならないまま4年生を過ごしていたら出会わなかった仲間と出会えました。文理も学部も超えた素敵な仲間ができて、たくさん刺激を受けました。と同時に、約30人分の「人生の岐路」に立ち会いながら、ファーストキャリアを一緒に真剣に考えた経験も、グッと自分の視野を広げてくれたと思います。

とにかく1年やりきりました。エンカレッジでは、こうして毎年メンター全員が入れ替わることがとてもプラスに働いていると思います。組織運営の上で最低限引き継がれるべきものは引き継がれていきますが、それ以外の目標や施策は毎年新しいメンバーで決めて実行する。1年間全員が全力だからこそ、結果が出せるんです。


ーー学生自らが運営する日本最大級のキャリア教育支援NPO「エンカレッジ」。毎年入れ替わる学生たちが、いかにして全国72支部、3万4000人規模の組織を運営しているのか、その秘密にせまったメンター対談でした。毎年進化を遂げていくエンカレッジの組織運営を、ZIGZAGでは今後も継続的にレポートしていきます。
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◆もっとエンカレッジについて知りたい人、エンターとして会員になりたい人は
こちらのページをご覧ください。

Profile

You Chou

張 昱

東京大学経済学部4年生

Riku Suzuki

鈴木 陸

早稲田大学政治経済学部4年生

Daisuke Sakagami

坂上 大介

明治大学商学部4年生